退職祝い|俺は60歳過ぎたら働かない

私の父は公務員でした。本当にお堅くて、学校などに呼ばれて講演をしても謝礼は役所にきちんと渡し、部下からであっても、お中元・お歳暮は決して受け取らない、根っからの公僕でした。

仕事ぶりもまじめで、法令順守、交通違反さえ起こさないような人でした。だから、父の口癖は「俺は60歳過ぎたら働かない」でした。

私たち家族も、働きづめに働いてきた父を見ていたので、

定年後はゆっくりするといいなと心から思っていました。

母も、父が定年を迎えたら一緒に温泉でも行こうと楽しみにしていたようでした。でも、父は定年を待たずに心筋梗塞であっけなく亡くなってしまいました。昼となく夜となく働いていた父は身体が限界だったのでしょう。56歳でした。

そう、父には退職祝いをしてあげることができなかったのです。退職したら、父と母に温泉旅行をプレゼントする予定でした。私と姉はそのつもりでお金もちょっとずつ用意していたのに。父を旅行に連れて行ってあげることはできなくなってしまいました。

だから、私たちは父にプレゼントできなかったお祝いを母にプレゼントすることにしました。母は思いがけず妻を退職してしまったのですから・・・。父に見せてあげたかった景色を母と姉と3人で見て回りました。

紅葉の田沢湖、八幡平、真っ白なお湯で有名な乳頭温泉郷などなど。思えば、家族旅行なんてこれが初めてだったかもしれません。赤に黄色、ところどころ茶褐色になっている紅葉を心から楽しみました。

とてもとてもきれいで、父がなくなった悲しみを一瞬忘れることができました。本当はみんなで行きたかったけれど、女3人の家族旅行もそれはそれで楽しかったです。

思いがけない退職祝い、私にとっても大切な思い出です。

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