退職祝い|依願退職なにの私のことを考えて

私は大学卒業後、新卒採用された会社で8年勤めたあと依願退職しました。

仕事に大きな不満があったわけでも、人間関係のトラブルがあったわけでもありません。学生時代にはわからなかった「本当にやりたい仕事」がその8年の間に見つかったからです。

それは、園芸店開業でした。学生時代から趣味で草花を育てていましたが、それを生涯の仕事にしたいと思ったのです。

会社の同じセクションの人たちが送別会を開いてくれました。私としては、いわば自分のわがままで会社をやめるのですから、申しわけない気持ちでいっぱいでした。

その送別会では2つの退職祝いをいただきました。1つは花束。定番の祝い品ですが、感激したのは会社の近くの花屋ではなく、都心の名店の花束だったことです。

女性社員たちが注文し、わざわざ都心のその店まで取りにいってくれたと聞いて、涙がでそうになりました。

もう1つが花の図鑑。「これからの仕事に役に立つだろうから」と、部長から手渡されたときには、ほんとうに涙が出ました。なんとすてきな職場で、自分は働いてきたのだとう、と実感。

にわかに「やめたくない」という気持ちが湧き起こってきました。もちろんいまさら「やめるのやめます」とは言えませんから、ただひたすらありがたく、2つの祝い品を受け取るしかありませんでした。

しかも部長から、「今日の送別会と花束は会社の経費だけど、図鑑はみんなでお金を出し合って用意した。私は小遣いが少ないからパスしたけど」と聞いて、またまた感激でした。

部長はふだんからユーモアあふれる人情家なのです。同じ退職でも、定年退職の場合は、職場の同僚や後輩たちも特別な思いをいだくものでしょう。

けれど依願退職の場合、送別会も祝い品も型どおりというのが、ほとんどでしょう。私は恵まれすぎていたとつくづく思います。

花束にしても図鑑にしても、先輩・同僚・後輩の方々が私のことを考えて選んでくれたものです。そのときにいただいた図鑑はもちろん、今も大切に使っています。一生の宝ものです。

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