退職祝い|父からの5万円はお疲れ様でない

父が退職祝いをくれた。現金だった。5万円。突然口座に入金されていた。父親にきくと「退職祝いだよ。おめでとう。」とだけメールが来た。

今年の3月で4年勤務する予定だった今の会社の退職して違う会社にいくと話したのは、確か去年の12月だった。

堅実で真面目な性格の私の父親は、退職に猛反対していた。退職した会社は世間的に見れば大手企業の銀行だった。大学4年の冬の入社直前に「よかったよ、わけのわからないベンチャー企業に行かなくて。安心したよ」といった父親の言葉が頭を何度もかすめていた。

そんな父が退職祝いをくれた。父は新卒で入った会社にずっと働き続けてもはや30年以上。昔ながらといっては古いかもしれないが、本当によく働いていた。普通のよくあるサラリーマンだった。よく働く父親だった。

今の世の中はノマドとか、フリーランスとか働き方の多様化が著しい。新卒で入社した会社にしがみついて生きていくような生き方はどうしても、できなかった。銀行に10年間勤めて、どんな自分ができあがるか考えただけでも怖かったし、こうなりたいと思うような先輩もいなかった。

退職の理由を説明したら、父親はなにもいわなかった。ずっと黙って目を閉じていた。父親の頭には白髪が交じり、少し髪の毛が薄かった。最近、父親を正面からみていなかった自分に気がついた。

5万円は大手銀行をやめてわけのわからないベンチャー企業にいく娘に贈る言葉だったのだと思う。

私の退職祝いはお疲れさまの意味ではなくて、父親からの応援でもあり、プレッシャーでもある。

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