父は定年で退職しました。
定年=60歳の誕生日という規定でしたので、還暦のお祝いと合わせて退職祝いも贈ろうと、姉と私で話し合いました。
しかし還暦の定番、赤いちゃんちゃんこと帽子と座布団の三点セットはまだまだ若いと自負しているだろう父のプライドに傷を付けるような気もします。それに今時の60歳は「おじいさん」と呼ばれるような年齢ではないとも思いました。
それなら何が良いだろう?ゴルフが趣味なのでクラブとか…でも素人の私たちにはどのクラブが良いのか分かりません。
ネクタイも退職祝いにはふさわしくありませんし、花など喜ぶ風流人でもありません。強いて言うなら本です。しかしせっかくのプレゼントですので、もっと価値のあるものを贈りたいとあちらこちら迷走しました。
何を贈るか決まらないまま、退職日が近付いてきます。私も姉も考えれば考えるほど混乱してきて、このままでは一番避けたかった赤色三点セットになってしまいそうでした。
ですが、資源ゴミの日に空き缶などを持ってごみ収集所に行った時、ふと目に入ったものがありました。お酒の空き瓶です。
そう言えば父は海外出張が多かったこともあり、ワインが好き。これと言って決まったメーカーにこだわるわけではなく、色々なものを買っては楽しんでいました。
そうだ!とその場で姉に電話しました。
「お父さんの退職のお祝い、赤ワインなんてどうかな?」
「いいかも!」お互いにお金を出し合って、2万円ほどのワインを2本。グラスも付けてプレゼントしました。
また、お祝いのメッセージと名前・記念日を彫刻してもらいました。今までご苦労様でした、ありがとう。そしておめでとう。
そんな気持ちを込めた赤ワイン、父も喜んで…仏壇にあげていました。その場で飲んでよ!とは思いましたが、我ながら良いセレクトだったのではとひそかに思っています。