退職祝い|定年後もつながりがあるように

父の退職の祝い品は、会社の部下一同からの電話機でした。

めっぽう機械に弱い父は、テレビのリモコンも躊躇するほどの機械音痴です。電話もなったら取るのが精一杯で、留守電機能も使いこなせませんでした。もう、配線がつなげられないのでと、黒電話とさよならした時は、なんとも不安そうな様子でした。

実家は、よくある簡単な電話機でしたが、黒電話とさよならして、プッシュホンになってから、父はあまり電話をかけようともしなかったのです。鳴るたび、玄関先にある電話機まで、面倒くさそうに応答しに行っていました。

そんな父の、退職祝いに電話機。父は、はっきりいって嬉しくなさそうでした。なんでこんな物を、今のだって充分使えてるのに無用の長物だよ。と、箱から出す事もなくそのままにしていました。

しばらくしてから、不幸にも父が入院する事がありました。退院して自宅療養という時に、家に箱のままおかれていた電話機を見つけて、今ある物と取り替えてみました。

余計な事するなよと、機械の配線がお前にわかるのかと不安がりながら、見守っていましたが、その機種には子機が二つついていたので、一つを父の寝室に置きました。

父が入院した事を、聞きつけた人たちが、いろいろ電話をしてきてくれました。退職してから、あまり、人と交流がなかった父ですが、心配して電話をかけてきてくれる人たちに、嬉しそうに話を何時迄もしていました。

あんなに、苦手がっていた電話を、なるなが待ち遠しいかのように枕元に子機をおいて構えている父をみて、

退職しても、みんなとつながりがあるようにと、会社の部下一同からの思いだったのだろうと感じました。

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